配信日:2021/4/2

日本ペアレント・メンター研究会の原口です。今回は、市区町村でのペアレント・メンター事業についてご紹介したいと思います。ペアレント・メンター事業は、2010年より、国の「発達障害者支援体制整備事業」として位置づけられ、都道府県・政令指定都市を中心にペアレント・メンターの養成や活動が全国に広がっていきました。そして、2018年、地域生活支援事業の「発達障害児者及び家族等支援事業」が新たに創設され、都道府県だけでなく、市町村でもペアレント・メンター養成の実施が可能となりました。

そこで、市区町村でのペアレント・メンター事業として、2018年以前から自治体独自にペアレント・メンターの養成と活動を実施している東京都足立区と、2018年度からペアレント・メンター事業が開始された東京都三鷹市に、その取り組みを紹介していただきます。


足立区

足立区内には、それまでも障がい特性のある子どもが活動する場や、そうした子を育てる養育者のための場がありました。それぞれの団体から思いを同じくする養育者がつながり、地域でより豊かな子育てができればとペアレント・メンター事業の発足を目指し、2016年に一般社団法人ねっとワーキングが立ち上がりました。以来、足立区と委託契約を結び、現在は29名のメンターが在籍。個別およびグループでの相談、啓発・研修、アウトリーチの相談等、幅のある事業を展開しています。特長は、発達障害に限らず、幅広い障がいのある子を持つメンターが在籍していること。また戸建て借家を拠点に、親子で楽しめる催しを企画したり、ご利用者さまに休息の場を提供するなど、気軽に利用できるサロン的な機能を備えているところです。メンターのフォローアップにも注力し、事務局との風通しのよいコミュニケーションや定期的な研修の開催を続けています。令和2年度はコロナ禍でグループ相談や研修等の中止もありましたが、電話相談の活用や、対面も感染予防対策を施して実施。リモート参加を適宜取り入れて、活動のいっそうの充実を図っています。

一般社団法人 ねっとワーキング
https://parentmentor.ioc.link/


三鷹市

三鷹市では、2004年、発達障害児親の会「モンブランの会」が設立され、月1回の定例会は、今も継続しています。そのメンバーが中心となり、2013年、発達障害児の家族支援を目的に、一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」を設立しました。Marbleでは、(1)発達障害のことを伝える「講演事業」(2)親が親を支える「相談支援事業」、(3)本人・家族の「居場所作り事業」の3つの事業を行っています。この中の「相談支援事業」が発展し、2018年度、三鷹市から委託され「三鷹市ペアレント・メンター事業」が開始されました。現在、登録メンターは21名います。活動としては、月1回の「個別相談」(1日2名、1時間ずつ)、「グループ交流会」(1回8名、2時間)を開催しています。心がけているのは、寄り添う、情報提供、一緒に未来をシミュレーション、押しつけがましいことは言わない、等です。メンターも、発達障害児の子育てをしながらの活動なので、無理をしない仕組作りをしています。コロナ禍、感染対策をしながら、相談は継続中。2021年度は、ルールをしっかり決めた上で「オンライン相談」も取り入れるか検討中です。

一般社団法人 発達障がいファミリーサポートMarble
http://marble-family.org/


市区町村が主体となりペアレント・メンター事業を実施している地域は、全国でまだ数えるほどしかありません。今後、発達障害のある子どもの家族がより身近な地域でペアレント・メンターと出会えるように、市区町村でペアレント・メンター事業が普及していくことを願っています。